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烏たちの帰る場所。【ハイキュー!!】

第4章 再び出会った僕たちは


「それでじゃ、帰ります」

「えー、蛍くんも泊まっていけばいいじゃない」

「いえ、ウチそこなんで」

スニーカーの踵を鳴らしながら、月島は家の方向を指す。

「今日はご馳走でした」

「いいのよ!またいつでもいらっしゃい」

背伸びしてポンポンと頭を撫でる山口母。

「…はい」

毒舌に定評のある彼も、流石に大人にはキチンと話すのだった。
珍しいものでも見たと、顔に出てしまったらしい。

「何、山口?」

「…ナンデモアリマセン」

きっと睨みを効かせる月島にタジタジの山口。
そのやりとりにコロコロと笑う山口母は至極楽しそうだ。

玄関で月島を見送ると、奥からお風呂が沸いた音楽が鳴った。

「お風呂準備できたみたいだから、ちゃん呼んできてくれる?」

「おっけー!」

階段をトントンと上がっていくとすぐ見える二つの扉。今日から共同生活のスタートだ。

ふと、脳裏に駅での出来事がフラッシュバックする。

突然涙目で抱きついてきた彼女からふわりと香ったシャンプーの香りを思い出して、かっと顔が熱くなった。

…女の子、なんだな。

そんな当たり前のことを考えを、頭を振って振り払う。

暴れる呼吸を整えてから、コンコンと左のドアをノックした。

「ちゃん?お風呂沸いたって母さんが…」

応答がない…。

「ちゃん?入るよ?」

薄くドアを開けて中をうかがうと、帰ってきた服装のままベットの上にいる彼女を見つけた。

びっくりして近づくが、上下する腹部を見て寝ているだけだと分かるとほっと胸を撫で下ろす。

ベットに腰掛けてそのまま寝てしまったのか、足は床に投げ出されていた。伸縮しない生地のスプリングコートもいかにも寝辛そうだ。

この様子だと朝まで起きなさそうだ。なによりも長旅で疲れたのだろう。

…寝やすくするためだ。気持ちとして山口は、一礼した。

「えっと、シツレイシマス…」

そっと、両足をベットに乗せて、コートを脱がせてハンガーにかけ、仕上げに掛け布団をかけてあげる。

すやすやと寝ている彼女は、起きている時より幾分幼く見える。
顔にかかっていた髪をそっと退けると、サッと頬に触れた。

「あら、寝ちゃってたのね?」

「うん、疲れてるんだよ」

おやすみちゃん。

心の中で言って、部屋の明かりを落とした。
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