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【イケメン戦国】リクエストアンサー作品(仮)

第2章 ~天下人とて人なれば~


信長は一度夜長から離れ、手早く楽な着物に着替えてから「少し付き合え」といつの間にか用意させてあった酒の膳を前に座り、その膝に夜長を乗せた。
夜長は膝に乗せられながらも信長の珍しい不機嫌に困惑する。
信長は膳に用意された酒を手酌で盃についで一口飲む。
そして改めて「貴様はもう少し自覚しろ」と言う。
先程よりは厳しくない声だが、低く静かに言う信長の物言いには普段の余裕めいた響きが無い。
気のせいか、何となく苛立ちに近い物を感じる。
「すみません、でも大した怪我ではないですよ。包帯など巻いていると大袈裟に見えますが」
夜長は眠気の残る甘い舌足らずな声で言う。
酌をしようと徳利に手を伸ばしかけるが、窘めるように大きな手で抑えられる。
今夜は手を使うなと言う事だろうと察する。
「怪我の事はすぐに報せを受けた。だが己の目で見なければ安心は出来ん」
一度言葉を途切れさせたが、抑えた手を怪我をしている指を避けて握る。
「怪我の事もだが、それ以上に俺が言っているのは貴様自身のことだ」
感情は抑えられているがどこか騒めかせる響きがある。
「……えっと……どういう意味でしょうか?」
信長は握った左手をそっと持ち上げ、甲に自分の唇をあてた。
「俺の物に傷をつけるのも許しがたいが、貴様自身が無防備だと言っている」
信長の唇が夜長の手の甲をやんわりと、意味ありげに口づけ、軽く舌を這わせ、最後にきつく吸う。
手の甲に薄く紅色の鬱血痕が残った。
ゆっくりとした嬲るような手の甲への愛撫に夜長は僅かに驚きながらも、指先を労わる様な触れ方に気遣いを感じてほっとする。
夜長の安堵した気配に信長が今度は不意に肩口に頭を乗せて首の付け根に歯を立てた。
まるで獣が噛みつく様な仕草に獰猛な熱を感じ、背が甘く痺れる。
「……っひゃっ!」
思わぬ刺激に驚いて声を上げると、歯を立てたまま手の甲にしたように唇を押し当てて、皮膚を味わうように舐め、甘噛みし、何度かきつく吸った。
自分が愛でた証を残し、信長の唇がやっと離れる。
「どうしたんですか?」
首を捻って信長を見上げる。
静かな表情ではあるが、目には飢えを満たそうとする様な、質量さえ感じる焔があった。
けれど、あまりに唐突だ。
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