第2章 ~天下人とて人なれば~
夜長は目を覚ましても身体が鉛の様に動かない。
朦朧とした意識で記憶を辿り、身体が怠いのも当然だと脱力した。
身体の節々が痛みまではいかないが重い熱を持ち、喉も変に乾いてる。
けれど、ふと顔を横に向けた時に左手の包帯が目に留まり、新しく巻かれている事に気付いた。
家康の巻き方とは違う。
きっと信長だろうと直感で思う。
もうとっくに昼を過ぎている。
ひとつ深く息を吐いて昨夜からの信長の様子を思い出す。
強引で傲慢で、それでいて繊細に優しい。
我が儘で勝手だが、夜長に対しても鷹揚でおおらかだ。
口では揶揄い、無茶な事や突飛な事を言っても結局は広く寛容であるのを知っている。
けれど昨夜からの信長には普段と比べて明らかに余裕が無いように感じられた。