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僕と彼女の声帯心理戦争

第5章 【第1章】嵐の前の静けさ Day3


「あの「あっ、なるほど!夜這いですな、
ご心配無く!!別に妖精さんに危害加えません!!!!!!!」

………………

沈黙が一帯を包み込む。そっちじゃない!!
ああもう…!!仕方なく葵の監視役として、彼女の元にまわるとペシ、と軽く手を頭に置いた。

「そろそろ落ち着こうね??」
「??何がです??」
「そうだね、君はハッキリ言わないと分からないだろうけど…皆君が寝てる間に何か被害を受けないか心配なんだよ」

「被害、ですか~。」こてん。今度は左に首を傾ける。

「だいじょぶですよ~。私一昨日の夜、羽京君と一緒の部屋で寝ましたけど何もされてませんよ~」

ああ……来たね、本日の爆弾発言2回目。羽京はもう半泣き状態である。主に心が。

「羽京、今のは本当かい?」
「……うん……」
羽京の様子を見て事情を何となく察した司が、なら仕方が無い、と落ち着き払った雰囲気で葵に告げた。

「……じゃあ、羽京の部屋を作るよ」
それでいいかな?と言う司に、彼女はわーい!と子供の様な歓声を上げた。

……一方僕は頭痛で頭を抱えていたけど。

******
スタスタスタ。澱みなく歩く彼女は、機嫌良さそうにふんふんふふーんと鼻歌を歌っている。

対して羽京は……もうお通夜状態だ。

「あ、羽京君、着きましたよ~」
今日のパズル収集は、ここです!そう言う彼女の声を合図に、視線を上げる。

「……うわ……」

酷い数の石像が、大量に破壊されていた。ちょうど司の破壊対象であるお年寄りの石像が沢山あったのだろう。……気分の悪くなる光景だった。

「ーー大丈夫ですか、羽京君」
葵が心配そうな声音で此方を見ている。

「あ……」

思えば、彼女にこうして純粋な心配をされるのはーーあまり、無い。
余程酷い顔をしていたのだろう。慌てて取り繕う様に、僕も手伝うよ、と言った。

「……見ていて辛いなら、音が聴こえる範囲内に潜んで、見ない様にしていて下さいね。あまり、無理しちゃ駄目ですよ」
いつも面倒事に巻き込んでくる彼女らしくなく、そんな台詞を吐いて、つかつかと彼女は冷静に1番端っこの石像に歩いてった。

「……え」「羽京君は、優しいですから」そう言って、いつもよりも儚くてーー何処か寂しげな、胸の締め付けられる様な笑みを向けられた。

まるで、自分は違うとでも言いたげな表情。
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