第16章 【エピローグ】奇跡の花
「千空さんは、聞いた限りでは他の人のチカラも上手く借りて同じ目標に向かって行けるーー
『上に立つ』チカラがあるんです。
実際、大樹君や杠ちゃんとやっていけてますし。だから、チームプレーを活かして戦ってくるかと。
集団戦では色んなタイプの人が要りますから…そこもクリアしてきそうです。今の司帝国では、同じ様な考え方や攻撃方法の人しか居ない。そこで差を詰められるかと。
……あとは、彼等の武器は科学力なので、司君達との戦力差をひっくり返す様な科学グッズも作るかな…。私達が雪解けまでは動けないのは読めるので。
聞く限り、頭も相当良いから……雪解け前の奇襲は、必然だね」
司帝国唯一の軍師は、そう分析した。
ーーそう。科学王国との開戦は、近い。
「……君は、血を長さない為に今まで動いて来たんだよね」知ってるからね、と微笑む羽京。
バレてましたか~、と苦笑いする彼女。
「……言い方は悪いですが…私のファンの割合はこの帝国の八割。全部『寝返る』は無理でも…特に信じてくれてる6割程度は寝返ります。過半数です。
人材が武器の司君の帝国からすれば、大打撃の筈です。そして氷月もーー」
ザッ。そこで足を止める。
「……彼なら、今の状況に満足してません。良くも悪くも、まだ帝国崩壊まではチカラを貸すーー
一時的な協力体制になる訳です」
風が、2人の髪を揺らす。
「…大丈夫だよ」
羽京の一言に、葵が顔を上げる。
「君だけに、負担はかけないから。ーー僕も一緒に行くよ」
そう言うと、元々握りしめていた手をギュッ、と固く握った。
「……うん。ありがとう、羽京君」
ザッ、ザッ。二人は歩く。
新しい道を。まだ誰も、歩んだ事の無い道を。
羽京は今では懐かしく思える、初めてライブをした時の彼女の曲を思い浮かべた。
誰も知らない僕らの世界
誰も知らない新世界へ
世界は変える為にあるーーーーーー
ーー共に、誰も死なない理想郷の為に、行こう。
君と共に、何処までもーーーー
~Fin~