第5章 【第1章】嵐の前の静けさ Day3
「あはは、僕は君の犬じゃ無いんだけど…」
「妖精さんですな!」
「いや…それも違うんだけど」
「エッ……??」
「エッ、じゃなくて。本当に…」
「エッ……私の年収…低すぎ……??」
某広告のパロディを思いっきりやらかす葵。
しかもご丁寧に手まで口に添えている。
「いや、そういうのいいから」
「じゃあ妖精さんですな」
「だからどうしてそうなったのさ!」
くわっ、となって思わず叫ぶ。
あ。
やらかした、と思えば後ろに震える大きな影。
司だ。
「ふふ……いや、悪いね、あまりに息が合ってたから……」
「でしょ~~」ムフゥっと胸を張る葵に、僕はもう諦めモードになりながら、いやそこ胸を張る所じゃないからと突っ込む。
「いやあ……羽京がここまで打ち解けてるのは、君くらいかもね」
ンンンンンンーーーー??????
羽京からしたら謎すぎる発言が司から飛び出る。
何処をどう見たらそうなるのだろう。明らかに玩具にされてるだけだが……。
「うきょーくんは森の警備員さんなんですよね?あと私のプロデューサーさんなので!彼の寝床作って欲しいんです!」
「ああ、そういう事か」
合点が行った様子の司。待って待って。そこで納得しないで?司??
「あの……「羽京君森にいっつも潜んでるんですよ~。妖精さんみたいでそれはいいんですけど、絶対そのうち身体壊しちゃいます~」
ブーブーと抗議する彼女。聞いてないし聞くつもりが無い。
「ちょ…「そうだね…。確かに君の言う通りだ。せめてたまに休む場所があってもいいかもね」
「はい~!で、私の住んでる辺りがちょうど全然空いてる場所なんで、私の家の隣とか近くにもいっこぐらい作れないかなと」
「「…………」」
これには司も羽京同様沈黙した。うん、だよね。
二人からしたら葵は現在も監視対象になっている上に、今勢力を増しているので、見張りやすくなる故悪い話ではない。が……
先に冷静沈着な司が口を開いた。
「…うん。発案自体は悪く無いね。ただ…」
「ただ…?」首をくいっとする彼女。
「君はそれでいいのかな?」
司は暗に『男の近くで寝る事になるがいいのか』と聞いている。司がいるから大丈夫とはいえ、一応帝国内の男女の寝所は離れてるからだ。
ンン?と彼女がもんもんとする。嫌な予感がした。これは来るぞ、爆弾が。