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僕と彼女の声帯心理戦争

第5章 【第1章】嵐の前の静けさ Day3


初ライブから3日経った朝。
葵の誘いを全力で断り、森で寝ていた羽京は、規則正しく眠る彼女が起きて来るのを待っていた。
すると突然、寝所のカーテンを開けて彼女が言ったのだ。

「羽京君は森の妖精さんみたいですな~?」
「よ、妖精って」
「よっと」

つかつかと歩み寄る葵。何をされるのか、と若干後退仕掛けるが、すかさず大股で距離を詰められる。

「今日は司君を探しましょうか、羽京君。あと、石像パズルさんのお手伝いね!」
ポン、と肩に手を乗せられた。

ここで断る選択肢は無いんだろうな。そう思い、羽京はハァ、ともう隠す事無く全力でため息をついた。
当の本人は相変わらずのニコニコ顔だが。

******
「司君、何処です~?」

葵はいちいちその美貌を活かして、くいっと首を傾げながら微笑んで司帝国の民に聞いてまわる。しかも敢えて怪しまれない程度に少し近めに顔を寄せている。

男所帯の司帝国民には効果てきめんで、司さんならさっきここに来てましたけど、他所に行きました!

などなど集まった証言を辿り、司の元にやって来た。

「やあ、葵。今日も元気そうだね」
良かったと微笑む司。わ、アオさん!!と司に報告をしていた人がササッと空気を読みいなくなる。

最近の司帝国では、幻の歌手ーー『Aonn』の存在が幻で無く現実として台頭していた。
この司帝国では司や氷月は「さん」付けで呼ばれる。その圧倒的な『武力』故だ。
だからこそ、武力を持たずして「さん」と敬称をつけて呼ばれる存在の葵は、異端だった。

「はい~、おかげさまで。でも、お邪魔でしたか…?」少し困った様に彼女が言う。
「いや、ちょうど報告が終わった所だよ。何か用かい?」
「はい~。妖精さんの寝床を作って貰おうと思って」


……………。


流石の司もあまりの不思議ちゃん発言に固まる。

司が返事をする前に「おぉおおおーーーーーい!!!うきょーーくーーーん!!!!」と超絶大声で叫ぶものだから、仕方なく駆けつける。
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