• テキストサイズ

僕と彼女の声帯心理戦争

第16章 【エピローグ】奇跡の花


司が去るのを見送ってから、羽京が問う。

「気付いてたのかい?まさか、ずっと前からー」
「うん…。司君の今の行動と明らかに矛盾してたから…。でも、司君なら、きっと自分の為だけってよりーーこれは根拠が無いんですけど、誰か他の、大事な人の為にお金を使うんじゃないかな、って」

「……そうだね、君が言うなら」きっと、そうなんだろう。羽京は、獅子王司という人物に想いを馳せた。

「で、取り敢えずその服は着替えようか?」
「あ……」
「司に見せたよね?」ゴゴゴゴ…という雷雨の様な音が聞こえる表情に、葵は後ずさりする。

「ふ、不可抗力なのと……ポンチョを着てるからカウントには入ら「直ぐに着替えてこっちの部屋に来てね」「はい……」しゅーんとなると、彼女がすごすごと部屋を去る。


「お待たせしました~」いつものロング丈ワンピースとポンチョで現れた彼女。湖や海で汚れた服を着替えた羽京にトコトコと近づく。

「……これ、もう一輪の方です…」ぷるぷるとした手で恥ずかしそうに手を出す。先程司に渡した青い薔薇のうち、渡さなかった方だった。

「あはは、僕はもう奇跡みたいなのを貰ったけど…??」「でも、あのドレスから渡せるのはこれくらいなので…」引き下がらない葵。

「…じゃあ、貰っておくよ」「はい~」にぱーと笑う彼女。青い薔薇と同じ、蒼い瞳。ーー海の瞳。
薔薇を机の上にすっ、と置くと、彼女が尋ねた。
「羽京君、眠くないですか?」
「あはは、そうだね…君を運んだし、徹夜だしね」

「じゃあ寝ましょう!!今日はもういっそライブも無し!!」そう勝手に決めると、早く早く~、と布団を捲って手をパタパタしている。全く、この自由奔放な僕の猫さんは。

(かわいいなあ……)

そっと心の中で呟くと、じゃあ君が先に入って?と言ってみせる。

「??……はい~」
取り敢えずポンチョを脱いで壁側に潜り込む彼女。自分も入ると、包み込む様に彼女を抱き寄せる。ふぁ!?と驚く彼女を、そんな大声出したら寝れないでしょ、と諭す。

抱き枕の様に抱えると、ふわりと自分が付けた潮の匂い。そして、程よくあたたかな感触。

(気持ちいい……)

羽京は、そのまま眠りについた。
眠る羽京を見ながら、葵は微笑み、囁いた。

「ーーーーおやすみなさい、羽京君。……大事にするからね」

/ 137ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp