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僕と彼女の声帯心理戦争

第14章 【第3章】ファム・ファタール


「初めてなの?」「?はいー。3700年前は結婚式挙げずに籍だけ入れたので~。今回がガチで初めてですね~」
こてん。どうしてそこが聞かれるんだろう、と言いたげに首を傾げる。

…その仕草だけで、さらりと白銀の艶のある髪が肩にさらり、とかかる。


「……なら、尚更駄目だよ」ふと、真顔になって呟く。
「え」つかつかと葵の元に近寄ると中腰になり、ぐいと顔を近づける羽京。流石に驚いた葵がその距離の近さに顔を赤くする。

「…な、なんでです…??」
「……こういう特別な服はね、特別な人の前だったり、特別なイベント……結婚式とかの為に取っとかないと」

そこまで言いきると、ふう、と一息つく。そして葵の目をじっと見すえた。

「ーーーー僕は、君にこういう服もーー2曲目の時みたいなのも、来て欲しくないよ」
「……それは…プロデューサーさんの意見です…?」困惑する彼女。まだ、分からないのだろうか。

「…あはは、君は鈍いね。…違うよ」
「……???…鈍いは初めて言われましたね」
「……そうかもね。君は人の気持ちばっかり耳を傾けてるから」「……??」

「ねえ、葵……本当は、この綺麗な服を着た姿、見せたい人が居たんじゃないの?」
「へっ!?!」

単刀直入に言う。そうでもしないと、この子には伝わらないのだ。……勇気こそ要るが、この方がずっと手っ取り早い。

「そ、そんな……人は……。確かに杠ちゃんとニッキーちゃんは他のみんなには直前まで黙って様って……んぐ」
目を逸らしつつ言葉を紡いでいた口を羽京の指が塞いだ。
「にゃ、にゃにを……」「また嘘ついたら怒るよ?」真剣な眼差しで言われる。

「……葵、僕が君の事を好きだったらどうする?」
「…………??!」素で驚いた様子の葵。
「あはは、驚いてる。…でも、君はもう少しハッキリ言わないと駄目な子だったね。」そう言うと、口元から指を離す。



ーーベッドに座る彼女を、ギュッと抱きしめた。華奢でいて、それでいて柔らかい。一体この身体の何処から今までの行動力やら皆の心を震わせる歌声達が出るのだろう。
……柔らかくてあたたかくて…いい匂いがした。
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