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僕と彼女の声帯心理戦争

第14章 【第3章】ファム・ファタール


身体の前側に行く程丈が短く、最短では膝くらいまで見える。
後ろはギリギリ裾を引き摺らない程度の長さだ。
ふんわりとパニエでも着たかのようなシルエットに、フリルの付いたドレス。
胸元には蒼い薔薇の刺繍。髪の毛には、青い薔薇を模したアクセサリーが二つ、華を添えていた。

「綺麗だ……」

思わず羽京が零した。他の観客も同様に、きれいだ、まるで花嫁のようだ…と感嘆の声が漏れる。

ーーどんな形でも 貴方を愛すーー

これまでは愛を与えられる事ばかりを望んだ主人公が、『私が愛する』と高らかに歌う歌だった。

1曲目の時とはまた違った、何処までも澄んだ瞳で遥か空を見上げる様に愛を唄う。

上からはひらひらと薄桃の花びら。
ダンサー達が姿を隠した間に置かれた、司が昔引っこ抜いて用意した切り株にもたれる様に地面に座り、空を見上げる。

ーー貴方は ……愛する人ーー
そう告げて、かつて真っ黒に染まった死神は息を引き取る。
瞼を閉じて嬉しそうに、優しく微笑んだまま動かない姿ーー




しばらくして、やっと観客達から拍手と歓声が沸いた。

「さいっっこうでした!!」「すげぇ、、、すげぇ良かったです!!」

暫くじっとしていた葵が、Aonnから葵ににこりと表情を変えて立ち上がり、笑う。

「ーー今回のライブは、特別に多くのスタッフさんに協力してもらいました~」

そう言って、杠やニッキー、大樹やダンサー達、果てには司まで出てきたから皆びっくりである。

「司君には、切り株の用意とか後ろで花びら降らせてもらいました~」

皆口々にまじか…!?霊長類最強の高校生をバックで使うって…!!とびっくりしている。

「プロデューサーの羽京君~?どこですー?」
きょろきょろする葵の姿に、慌てて駆けつける。そういえばスタッフロール的な紹介あったんだった……忘れる所だった。

「?どうかしました?」きょとんとしながら羽京を見詰める葵。あっ、いや…と濁す。

……とても綺麗だったし似合ってる、なんて褒め言葉は口が裂けても言えなかった。

******
その日のライブは過去の中で最も好評に終わった。
準備物も全て撤収させたし、後片付けは終わった。
じゃあ皆さん解散で~!お疲れ様&ありがとうございました!という葵の声で解散。
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