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僕と彼女の声帯心理戦争

第13章 【第3章】死神衣装


「な、なななな」「イタズラ猫だからね…君は。こうしないと大人しく寝ないでしょ」
そっと耳元で囁くと、寝ます!寝ます寝ます!!普通に何処にも行かないです!!と言う声。

……頬を赤らめながら言われても全く迫力が無いのだが。

(あ……)

ふと、更に締め付けたらどうなるかとギュッ、としてみる。

「ふにょえっ…!?」「早く寝ようね」「わ、わかったから緩めて…!緩めて…!!」「ハイハイ」
少し緩めると、ホッとしたように簀巻きのまま壁を向いている。

……さっき彼女の反応を見て何を思ったのかわかった。どう見ても嫌いな人に対するものでは無い反応が、可愛らしかったのだ。

「あのー…」ぼそりと葵が言う。離して、とでも言うのだろうか。内容は推察出来たので先回りする。
「君が寝るまでずっとこうしてようかな」「えっ…」
そっと、彼女の頭に顔を寄せる。
ふわり、といい匂いがした。

(これ……僕の方が眠れそうだなあ……)
そう思いつつ、羽京の意識がフェードアウトしていく。

「あの…羽京君…あのー…」
流石に元自衛官の筋力には対抗出来ない葵は必死に呼びかけるが…

「…すー……すー……」

「えっっ」
ね、寝てる……この状況で……。

やっぱり羽京君からしたら何でもないただの監視対象なんだ、
だからこんな風に平気そうに寝ちゃうんだ、とむくれつつ、ふとそーっと羽京の匂いを嗅ぐ。

森の草木の匂いと……お日様の匂い……

徹夜明けの眠気にこれは……そう思いつつ、葵も眠りこけたのだった。

******
「アンタら……仲が良いのはよく分かった!けどね!羽京!!女の子を抱き締めて寝るもんじゃないよ!!それも葵は徹夜明けだったんだろ!?」

「あはは、うん……ごめんなさい……」「あのー…ニッキー先生…徹夜して服のデザインしてた私も悪いので…その辺で」

「止めないよ!!」カッ!!と目を見開くニッキー。

どうしてこうなった…………。

葵は、あくまで羽京など特定人物にしかバレず、迷惑がかからない程度に上手くイタズラするのだ。それを真似るなど100年…いやそもそも僕には無理だったのだろう。

あの後、結局朝食作りには遅れ、ご飯の時間に間に合わず、このリボン作りの作業に遅れて来る…という始末だった。まさかあそこで本気で寝てしまうとは……。
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