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僕と彼女の声帯心理戦争

第13章 【第3章】死神衣装


………それは、結局元死神の主人公の方が先に死んでしまうのでは。

「えっと……結局結ばれたのかな…?」

「そこが賛否両論分かれるんすけど~、少なくとも二人にとっては幸せらしくて、ラストで笑ってるんですよねぇ…」「あのシーン心にくるよな…」「なんかもう幸せそうならいいよな…」「ほんとそれ…幸せって、他人が決めちゃいけねえんだよな…」

……泣いている。大の男たちが。筋肉ムキムキの男達が。

あはは……と苦笑いする羽京。……大の大人が揃いも揃って泣いてる晩ご飯……。

少し困っていると、おや~~と聞きなれた声がした。葵だ。

「皆さん、どうかしました?ご飯出来ましたよ?」
「あ、すんませんアオさん!アオさんにばっかり作業させて…!」
「いえいえ~。皆さんは狩りを頑張ってますし。適材適所、向いてる所をやれば良いのです~」
ニッコリと営業スマイルをする葵。

感極まり更に泣き出す集団。
まあまあ…ところでなんで泣いてたんです?と彼女が聞くと、ファンの1人が顔を上げる。
「ファムファタです…」「ああ~」

それだけで合点がいったようだ。アレは賛否両論ありますしね~。と言うと、
でも確か以前リクエストされましたよね?そのうち歌いますので良ければ聞いて下さいね~、と微笑む。

その一言で泣き喚いてたのが歓喜の声に変わった。
流石の影響力である。

そして微笑んだまま、じゃあ配膳するので列に並んで下さいね~と去っていく彼女。
それを見ていたファンの1人がポツリ。気になる事を呟いた。

「……アオさんて、咲夜さんに似てないか?あの綺麗な死神…」「確かに…」「ビジュアルのとか声の雰囲気も似てる…」
と賛同する声。

ーー男性の運命を狂わせる、運命の女性。ファム・ファタール。

俺はアオさんになら狂わされてもいいな~と言うファンを横目に、羽京は静かに彼女の後ろ姿を見ていた。

******
(なに?あの人の魂)

私は思わず気を取られた。
路上で私の美貌に釣られた男達が寄ってきた。どれも汚い魂だが一応ひとり分として数えられるのだから、世の中おかしいと思う。

《真に美しい魂はねぇ、眩しくて綺麗なの》
かつての先輩死神のウフフ、と笑う姿を覚えている。

ーー初めて見る、綺麗な色。その少年の気を引く為に、私は叫んだ。

「ーー助けて下さい!!」
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