第4章 邂逅への誘い
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「万屋に?」
「はい。ご一緒して、必要なものをいろいろ買いたいなと」
スマホはもう少し先になりそうですが、と申し訳なさそうに審神者が言った。
翌日、審神者部屋に呼ばれ何事かと思ったが、買い物の誘いのようだった。
なんだか申し訳なくなる。
別に鶯丸は、物が欲しいわけではないのだ。
「あ、普通に買い物も必要なので、手伝っていただければありがたいです」
そういう気まずさもあり、買い物の同行を承諾した。
と、静かな足取りが聞こえてくる。
部屋に入ってきたのは、加州だった。
「主、人払いはおっけーだよ」
「ありがとうございます、加州」
名前を呼ばれ、加州はニコニコ喜色満面、というわけでもなく。
それを抑え、努めて真面目そうな顔を繕っていた。
審神者が纏う雰囲気が、途端に張りつめたものに変容したからか。
「……というのは建前で」
声を潜め、審神者がいずまいを正す。
緊張した面持ちで、鶯丸をまっすぐ見た。瞳は澄んで、不安と緊張に揺れている。
「昨晩、演練をした前田の審神者から連絡が来ました。前田が、あなたと話したがっていると」
「!」
「先方かこちらの本丸で話すのが一番安全ですが、移動記録を残したくないそうです。
なので、現世で、あちらの審神者が張った結界内でーーあっそこが万屋の近くらしいのですがーーお話するのはどうかということになりました」
移動記録を残したくない。その前田の要望に、疑問を抱いた。
しかも結界だと? そこまで警戒する気持ちもわからないではないが……。
「現世に行きますので、護衛として加州が同行します。なのでできれば加州に、このままこの場にいてもらいたいのですが……」
「……あぁ、構わない」
「ありがとうございます」
「なんで主がお礼言うかなぁ」
釈然としない加州が口をとがらせる。
そんな彼に、審神者がやわらかく頬を緩めた。
二人の信頼関係が見てとれる。数日前までなら、きっとなんとも思わなかっただろう。
だが今は、どうしようもなく、二人の存在を遠くに感じた。