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【刀剣乱舞】ラプラスの演算子

第4章 邂逅への誘い


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「万屋に?」

「はい。ご一緒して、必要なものをいろいろ買いたいなと」

 スマホはもう少し先になりそうですが、と申し訳なさそうに審神者が言った。

 翌日、審神者部屋に呼ばれ何事かと思ったが、買い物の誘いのようだった。

 なんだか申し訳なくなる。

 別に鶯丸は、物が欲しいわけではないのだ。

「あ、普通に買い物も必要なので、手伝っていただければありがたいです」
 
 そういう気まずさもあり、買い物の同行を承諾した。
 
 と、静かな足取りが聞こえてくる。

 部屋に入ってきたのは、加州だった。

「主、人払いはおっけーだよ」

「ありがとうございます、加州」

 名前を呼ばれ、加州はニコニコ喜色満面、というわけでもなく。

 それを抑え、努めて真面目そうな顔を繕っていた。

 審神者が纏う雰囲気が、途端に張りつめたものに変容したからか。

「……というのは建前で」

 声を潜め、審神者がいずまいを正す。

 緊張した面持ちで、鶯丸をまっすぐ見た。瞳は澄んで、不安と緊張に揺れている。

「昨晩、演練をした前田の審神者から連絡が来ました。前田が、あなたと話したがっていると」

「!」

「先方かこちらの本丸で話すのが一番安全ですが、移動記録を残したくないそうです。
なので、現世で、あちらの審神者が張った結界内でーーあっそこが万屋の近くらしいのですがーーお話するのはどうかということになりました」

 移動記録を残したくない。その前田の要望に、疑問を抱いた。

 しかも結界だと? そこまで警戒する気持ちもわからないではないが……。

「現世に行きますので、護衛として加州が同行します。なのでできれば加州に、このままこの場にいてもらいたいのですが……」

「……あぁ、構わない」

「ありがとうございます」

「なんで主がお礼言うかなぁ」

 釈然としない加州が口をとがらせる。

 そんな彼に、審神者がやわらかく頬を緩めた。

 二人の信頼関係が見てとれる。数日前までなら、きっとなんとも思わなかっただろう。

 だが今は、どうしようもなく、二人の存在を遠くに感じた。
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