第4章 邂逅への誘い
<加州side>
レア度の高い刀剣を鍛刀しやすくする。
そんな怪しいキャッチコピーで、あの絵馬が新人に支給された。
なんでそんなものを配ったんだ、と政府に怒りを覚えた。
加州のレアリティは木瓜形、つまり下から2番目。
顕現された鶯丸は、逆に上から2番目だ。なんならこの本丸では1番である。
主がレア度の高い鶯丸を珍重し、唯一無二であるはずの初期刀をないがしろにする、などとは思っていない。そんなこと主はしないだろう。
でも、もしも、扱いづらい自分が使われなくなってしまったら?
可愛がられなくなってしまったら?
愛されなくなってしまったら??
そんな不安が後ろをついて回ってくる。
主に対する自らの信頼が足りないからでは、とも思えて余計に自己嫌悪に陥ってしまう。
憎き絵馬め。
そんなふうに、加州はどうにかこうにか、鶯丸への嫉妬を絵馬に転嫁するなどしているのに。
当の鶯丸ときたら……。
顕現されてから皆が甲斐甲斐しく世話を焼くというのに、なんとなく話を聞いていない。なぜか慣れているっぽいのだ、肉体に。
そして、強い。
いくらレア4とは言え、顕現されたばかりのひよっこに負けるわけがないと手合わせしたが、これが強かった。
あとは、鍛刀された日、ちょうど加州が近侍をしていたのだが、なんだか”変“だったのだ。
いつもなら、鍛刀が終われば鍛刀部屋からその知らせが来る。
だがそれがないままに、加州がちょっと審神者のそばを離れたすきに、奴は現れたのだ。
「加州! 絵馬で鶯丸が鍛刀されました!」そんな興奮した面持ちの審神者とともに。
そんなある日、主から神妙な顔で頼まれた。
他の本丸とも関わるらしいことで、鶯丸と話をするらしい。そのとき、加州に同席してほしいと。人払いをした上で、である。
嬉しかった。
誇らしかった。
他の誰でもなく、一番に頼りにされているんだ、そう思えて、嬉しくて仕方がなかった。
肝心の話の中心が鶯丸だというのは気に入らなかったが、心配でもあった。
演練から戻ってきたとき、鶯丸は深く考え込んでいるような様子だったのだ。演練でなにかあったに違いない。
だが、それを話すつもりはさらさらないようだった。
心配性な主も気づいて心休まらないだろう。