第15章 回転不変:無題のノート
審神者の特質が刀剣男士に影響するというのは、もはや確立されつつある理論だ。
例によって、主はあの審神者の刀たちからも妙に好かれている。
刀たちまで、主のことを「主のお姉さん」などと呼んではまとわりついている始末だ。
「主は孤児院育ちで天涯孤独でな……そなたの主が家族のように我らの主を可愛がってくれるのが本当にありがたい」
などと三日月から言われた。
いや、三日月は問題じゃない。
問題なのは自分だ。むこうの鶯丸だ。同じ刀だというのに、いや、同じ刀だからか? 余計に目について、なんだか気に障る。
なんというか、距離が近いのだ。
幼い子どもを“主”として戴くためか、彼女に対しても似たような接し方をする。
話しかけるときに顔を寄せる(そんなことをしなくても聞こえる)、頭を撫でようとする(阻止した)、衣食住の世話を焼こうとする(俺の仕事だ)などなど。
「ライバルがいる苦労が少しはわかったか?」
などと言われたが、なんのことか不明だ。
今度のお花見も少々不安である。
酒禁止令はすでに発令した。酔うと常軌を逸した甘え方をしてくる主は、研究室の外には出せない。
主の尊厳を守るためだ。研究室内なら鶯丸が介助するので飲んでも全く問題ない。
政府の施設で、主が自分以外と親しげに話しているのを見たことがなかった。
それがちょっと心配だったはず……なのだが。