第15章 回転不変:無題のノート
それから、主に新しく友人ができたらしい。
研究の一環で、複数の審神者と関わる機会がうまれたが、その中のある審神者に妙に好かれているのだ。
ときおりこの研究室にも顔を出してくるほどで、だいぶ懐いているように見える。
主はその審神者を、年の離れた弟かなにかと思っているらしい。歩くときに手を繋いであげているのを目撃したことがある。たぶんそれって、もっと幼児向けの対応なんじゃないかと思う。
今日も政府への研修にかこつけて、彼がやって来ている。
「お姉さんとこの鶯丸さん、なんかこわい……」
「えっ?! こわい?!?!」
ひそひそ話だが、鶯丸の耳にはしっかり入ってきていた。ちなみに、主の驚愕のリアクションはそれなりの音量だった。
「いや全然だよ! この前キミのとこの本丸から帰ってきたときも、風呂からベッドからいろいろ準備してくれてて、すごく優しいんだよ」
「この前って、泊まるはずだったのに鶯丸さんが迎えにきて帰っちゃったとき?」
「そうそう。たまにボクのこと、キミより幼い子どもかなにかと思ってるんだよ。キミの本丸で粗相をしないかってね」
「う、うーん……子どもっていうよりかは――」
「主、そろそろ時間だ。いつまでもお喋りしていては審神者殿に迷惑だろう」
「ひっ!」
まだ齢二桁になったばかりだろう審神者は、突然の鶯丸の登場に幼い顔を引きつらせた。
「ごっごめんなさい! 失礼しますっ!!」
「あっうん、またね!」
二度と来なくていいぞ、が出かかるが、すんでのところでとどめる。
バタバタと研究室を出ていく少年を、主は名残惜しげに見送っていた。いや、来週お花見に呼ばれていたからすぐ会えるじゃないか。