第15章 回転不変:無題のノート
人間社会には、“適材適所”という言葉があるという。
彼女には、ひとつの本丸の主として兵隊になるより、全体を見渡して、システムを改良することで一人一人の兵隊をより強くする方が向いている。
その方が主の力が最大限発揮されると、鶯丸は思った。
「ボクはどうすればよかったんだろう……」
「雨が降ることを予想できれば、人は傘を持って出かける」
「……?」
「嵐や地震も同じ。来るとわかっていたら、嵐なら家から出ない、地震なら机の下に隠れる、そういう対策がとれる」
鶯丸の言っている意味がわからないのか、主は頭上に?を浮かべたままだ。
「主の研究は大いに役立っていると俺は思うが、主がその実感を得られないなら、敵の攻撃にいかに対応するかというところにフォーカスすればいいんじゃないか?」
主の研究は、霊力全般に関わる、抽象的な概念を扱うことが多い。
それらの研究結果が実務上に転化され、枝葉の設備や道具に反映される。
だったら直接、設備なり道具を開発すればいんじゃないか。単純に、そう思った。