第15章 回転不変:無題のノート
:X年前
「友達が戦死したんだ」
落ち込んでいる主に声をかけると、返ってきたのはそんな言葉だった。
鶯丸は今朝のニュースを思い出す。
歴の浅い審神者の本丸が、相次いで歴史修正主義者の急襲に遭い、多数の犠牲者が出たというものだ。主の友人もその犠牲者の一人らしい。
「すまない、つらいことを聞いた」
「ううん、ボクは大丈夫」
首を小さくふる主は、ぼーっと視線を虚空に固定したままだ。
いつもなら、昼ごはんを手早く食べ終えたらすぐ機器の前に戻って、数値などを確認するのが主だった。
だが、今日は違った。
まず、ごはんの減りが遅い。動作に力がなく、ゆっくりである。
つぎに、顔色も良くない。大丈夫ではないことが一目でわかった。
「前線で戦う審神者たちのために、今まで一生懸命、自分なりに頑張ってきた。でも、ボクはまだなんの役にも立てていない……」
「何を言うんだ。主が貢献してないのなら、大半の人間は貢献していないことになる」
「ありがとう。キミはいつもそうやって励ましてくれるよね」
「気休めじゃなくて、それが事実だから言っている」
主は苦笑じみた表情を返してきた。
「鶯丸は本当に優しいね」
なんて言って。
……本丸勤務を選ばなかったことに負い目を感じているのだろうか?