第15章 回転不変:無題のノート
それから、病的なまでの研究好きだから。
もはや研究室に住みつき、寝ている時間以外は全て実験、文献の分析、計算、などなどに費やしている。
ゆえに、政府の研究所で霊力の研究を続けたい動機が大半だったようだが、
「あんな大人数の刀剣男士とうまくやっていけるわけがない」
も、本丸勤務の審神者を選ばなかった理由らしい。
人(というか刀?)付き合いに対する苦手意識はかなりのもののようだ。
実際、研究所の他の研究員や、ときおり訪ねてくる政府の役人とのやりとりを見るに、
『天は二物を与えず』
ということわざが思い浮かぶ。
ぎこちない愛想笑いに、オドオドと自信なさげな態度。緊張のせいか、毎回噛みまくりである。
「……どうせボクはコミュ障だよ」
むくれる主が、自分にはうちとけてくれたことがたまらなく嬉しい。
「その……これからも、ここにいてくれる?」
いくばくかの不安を滲ませて、主が尋ねてきた。
本丸のように歴史修正主義者と直接戦うことはないが、主の研究補佐という今の仕事を鶯丸は気に入っていた。
「もちろんだ」
肯定を返せば、主はパッと顔を輝かせたかと思うと、目線を下げ、胸がいっぱいだというように顔を綻ばせた。