第15章 回転不変:無題のノート
「ほんとうにごめん……」
一年が経ってもなお、主はず~んと酷く落ち込みながら謝ってくる。なぜあのようなリアクションになったのか尋ねてみても、ゴニョゴニョと誤魔化されるだけだった。
「あのね……鶯丸みたいな神様が現れたらそうなるよ……キミにはわからないだろうけど……」
そう嘆息まじりに言う主の頬は、どことなく朱に染まっていた。そういうものなのだろうか。
ふと気になって、自分を狙って鍛刀したのかと尋ねれば
「べ、べべべ別にそういうわけじゃ……」
ないらしい。
去年の今日と比べれば、随分と打ち付けたものだ。
最初はろくに目も合わせてくれず、話しかけると毎回毎回飛び上がってびっくりされた。やっと会話ができてもおかしな敬語だったし、緊張にこわばった顔ばかり見せられた。
「人付き合いがへたなんだ。キミに嫌われたらどうしようって、そればっかり考えてて……」
主が深刻そのものの顔で明かしたことを思い出す。
霊力があれば、万年人手不足の政府に容赦なく審神者として駆り出されることになる。
しかし、彼女は例外だった。彼女には、審神者になるかどうかの選択権があった。
なぜか。
一言で言えば、天才だったから。
聞くところによると、本丸に配備されている品々のいくつかは、主が開発したものらしい。
その功績を認められ、政府の敷地内に個人用の研究室まで与えられている。