第11章 決戦前夜
>>前田:自明のことですが、僕たちは今、こうして折られることもなく、別の本丸に配属されるような形で“刀剣男士”を続けています。
おそらく初期刀である山姥切さんも同じです。折られていはいない。
では、刀剣の扱いがこうなら、刀剣よりも数の少なく希少な存在であるはずの審神者を、主君を、亡きものとするでしょうか?
>>前田:僕はそうは思いません。
ただの文章であるはずなのに、前田の力強い眼差しを感じた。強い光の灯る瞳を、たんに希望的観測と表現してしまうのは、あまりに不適当な気がする。
それに、前田の言葉に縋りたかったのかもしれない。
本丸が消えても、主はどこかで生きていると。
そう信じたかった。
そうでなければ、自分の足ではもはや立っていられないから。
>俺も、主は生きていると信じている。
>>前田:もちろん僕もです。主君だけでなく、山姥切さんも生きています。
ただ、本丸と同じように、いつ“なかったこと”にされるかわかりません。
そこで、山姥切さんがどこにいるのかという話に戻るのですが、鶯丸さんはなにか心当たりはありますか?
そう問われ、答えに窮する。
山姥切は保管室にいた、だから保管室にいる可能性が高い。
しかし、保管室と言ったって、そもそも本丸は削除されているという。削除された本丸への行き方など、鶯丸が知るはずもない。