第11章 決戦前夜
山姥切国広の話。
鶯丸は、それをはっきりと覚えていた。
山姥切は、前田の夢の中で助けを求めていた。しかも彼がいたのは、本丸の保管室だ。顕現していない刀剣を保管し、場合によっては刀解を行う場所。
つまり、山姥切が刀解されるのではないか、それを山姥切本人も危惧、あるいは予感しており、夢を渡って前田に助けを求めたではないか。
これが、鶯丸と前田の見解だった。
>>前田:あれ以降、夢自体見ていません。だからでしょうか、山姥切さんを助けるには一刻を争う気がして……
前田の泣き出しそうな顔が頭に浮かぶようだった。
>保管室というと、山姥切は俺たちの本丸にいるのか?
>>前田:それが、審神者様に調べていただいたのですが、僕たちの本丸はなくなっていたんです。
「……は?」
思わず声に出ていた。ディスプレイに躍り出た文字を凝視してしまう。
“僕たちの本丸はなくなっていた。”
そんな馬鹿な話があるかと、かぶりを振る。
その言葉の意味を質そうと、慣れない指使いで文字を打ち込んでいく。