第11章 決戦前夜
翌朝。
というか、昼。
ケロッとした男士たちの中で、鶯丸は一人、二日酔いであることがハッキリわかる顔で、広間のテーブルに突っ伏していた。
「意外に弱いんだね?」
「いや……お前たちが……強すぎるだけだ……」
「ボクたち主さんほど強くないよ~」
くすくすと乱が笑う。呼ばれたと思ったのか、「え?」とこちらを見る審神者の顔はいつも通りだ。むしろ記憶を取り戻したおかげか、血色がよくなっている気もする。膨大な酒量は彼の体のどこへ行ったというのか。何が彼の体内で起きているのか。知りたいような、知ってはいけないような……。
審神者はPCを開き、彼に群がる男士たちからなにやら説明を受けていた。
どうやら件の噂(審神者の人が変わり、現世に帰ったり、行方不明になったり、ブラック本丸になったりしたという書き込み)について説明されているらしい。
男士たちに指示されながら、情報源である電子掲示板やまとめwikiを閲覧しているようだった。
「特製のお味噌汁だよ。二日酔いに効くから、ちょっとずつ飲んで」
「…………ヴッ」
「わっ!? 大丈夫!?」
目の前に現れた味噌汁を見て、思わずそんな声を漏らしてしまった。燭台切に背中をポンポンと優しくなでられる。
えずきながらも、なんとか堪えられた。一人だけグロッキー状態なんて、気にしたくないが、恥ずかしい。不恰好だ。
それにしても、こんなに飲みすぎたのはいつぶりだろう。いやそもそも酒が久しぶりか。
「我慢せずリバースした方が楽になれますよ。あっスポドリもありますからね!」
世話好きな堀川も、かたわらからスポーツドリンクを差し出してくる。その後ろで心配そうに視線を注いでくるのは、和泉守兼定だ。
視界にいる男士たちは、揃いも揃って健康そのものの様子だった。
おかしい。あの審神者の影響か?
心配性と酒豪は、あの主の影響なのか?