第11章 決戦前夜
『あの男はこうも言っていました。君は歴史に惑うだけの愚かな大衆ではない。歴史を正し、そして作る、選ばれし審神者なんだ、と』
『だからですかね、不思議とひっかかったんです……ラプラス計画という言葉が』
審神者は首をひねり、ほかに失っていた記憶はないか、しきりに頭のなかで記憶の紐を手繰り寄せていた。
組織的、計画的に行われる拉致連行、実験、そして審神者への登用。
政府が全く無関係だと考えるのも不自然に思えた。
というか、選ばれし審神者だののくだりは、どう考えても政府側の発言じゃないだろうか。
――と、自らの思考が、ここで止まってしまったことに気づく。
ただ座っているだけなのに、ぐるぐるとその場で回転しているような錯覚を覚える。
酔いのせいか、平衡感覚が狂ってきた。頭の中もぼんやりするし、なにより暴力的なまでの眠気が襲ってくる。
まるで水であるかのようにぐびぐびと日本酒を飲みほしていく審神者を見ながら、鶯丸は目蓋がどうしようもなく重たくなっていく心地よさを感じていた。