第11章 決戦前夜
確かに、夜戦での短刀には舌を巻く。鶯丸がろくに斬らない内に、戦闘が終わっていたこともあった。
正確な索敵、着いていけるわけのない機動力、しかも敵を屠るだけでなく避けるときた。
全身に漲る自信は、乱の笑みに妖しさすら与えていた。
「毎月ね、その月で一番誉をとった人を宴会で祝ってるの。今月の主役は鶯丸さんだよ」
そう言って乱は、どこか余裕たっぷりな笑みを咲かせた。
最高練度が60台の本丸で、90台の実力を保持している(はずの)鶯丸が誉を最も多くとる――それは、あまりにも自明のことだった。
鶯丸の複雑な状況を思ってか、ストレートに“そんなのズルじゃん!”と言えないせいか、加州は刻々と眉間の皺を深くさせていく。
「も~加州いつもなでなでされてるじゃん」
「そういうことじゃないんだよ! わからない!? わかるでしょっ!?」
「わかるけどさぁ」
くすくす苦笑を浮かべる乱。
なるほど、1位になったあかつきには、宴会の席で主になでなでされるというご褒美つきらしい。妙な制度を導入するものだ。