第10章 遠い残響に耳をすませて
そしてある日終わりが訪れた。
俺だけが、本丸に残されていた。炎にあぶられ、風景が蜃気楼のように揺らめく。
突然の敵襲だった。
戦力などないに等しくなり果てていたこの本丸は、たやすく敵の手に落ちた。笑えるくらい、今までの戦績など見る影もなく、余りにたやすく陥落した。
無意味に本丸の奥に落ち延びたが、やがてここも見つかるだろう。
座り込む俺の前に、主は折れた刀身を握って立っていた。見ればところどころ火傷していた。
主の顔を見るのは、なんだか久しぶりな気がした。
主はいつも優しく笑いかけ、励ましてくれた。
俺にとって、いやほかのみんなにとっても、主は太陽のような存在だった。
こっちの気分が沈んでいようがお構い無しに、
「俺はそばにいる、どこにも行かないからな」
「すがりついてもいいぞ!」
なんて。冗談めかして笑う主のことを、表向きは疎みながらも、本当は心から慕っていた。
しかも素直になれなくて、俺が兄弟のような愛情表現をなかなかできないことまで理解されていた。
悔しくて、嬉しかった。そんなあたたかい気持ちで心を満たしてくれた。
どうせ捨てるなら、最初から優しくしないでほしかった。
どうして俺は折ってくれなかったんだ? みんなみんな折ったじゃないか。見殺しにして救わなかったじゃないか。
どうして俺だけを残したんだ?