第5章 犬、時々虎。Ⅱ
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野薔薇が何かを言いたそうに私を見る。
けど、特に何も言わなかった。
「……はあ、虎杖に悪いし。
雪奈、また付き合ってくれる?」
「もちろん、次は真希さんも」
「そうね!じゃあ帰りましょうよ」
ニカ、っと笑顔を向けられた。
本当に素敵な顔で笑う子だな、と思う。
2人で電車に乗り、高専に戻る。
戻る間に、悠仁に返信してない事を
思い出して、文字を打ち込んだ。
『お疲れ様!今から高専に戻るよ。
竹下通り楽しかった!今度、一緒に
見てまわろうよ。』
送信し終わって、一つため息をつく。
こうしていればただの高校生。
でも、任務が入れば生きるか死ぬかだ。
「絶対4人で卒業したいな…」
「………声に出てるわよ。
当たり前じゃない、絶対よ」
「私、野薔薇とタメで良かった」
「私も、今度は渋谷に行くわよ」
「もちろん」
少ししんみりしながらも高専に着いた。
着いてからすぐ野薔薇と別れて自分の部屋に
戻ってきたけど、そういえば、返信が来ない。
いつもならこの時間はわりかし
早めに返信が来てた気がする。
……この時間に部屋に行ったら迷惑?
もう時刻は21時過ぎ。
一般的に言えば迷惑な時間である。
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