第5章 犬、時々虎。Ⅱ
.
いつも通り、原宿の竹下通りは
信じられない程人で溢れている。
目を引く食べ物、可愛い雑貨、色々。
「ん〜!原宿!賑わってるわね!」
「野薔薇は原宿好きだね」
「もちろん!私が住んでた田舎に比べて
魅力的なものがたくさんあるからね!」
「野薔薇が楽しそうで良かった」
「何言ってんのよ!雪奈も楽しむの!」
「うん!」
2人でプリクラを撮ったり、服を見たり
凄くデカめのわたあめを食べたり。
すごい、なんだろう、女子高生っぽい…!
たまにはこういう事もいいな。
呪いなんて忘れて、今この瞬間を楽しむ。
忘れてたな。
「……野薔薇、ありがとう」
「ん〜?ふぁいあ゛(何が)?」
「ごめん物食べてる時に。
いや、こういう、普通を忘れてたなって」
「……ん、私は自分らしくいるために
呪術師になったし、こういうのは必然というか。
普通って難しいけど、常にあるものではないから
今、一瞬でも自分のせいで無くすなんて
勿体ないじゃない?だから私は全力で楽しむ。
もちろん、そこには雪奈も一緒よ!」
「………うん!」
ブー、ブー、と携帯のバイブが鳴った。
時間はもう19時過ぎ。
受信者は虎杖悠仁の名前が表示されていた。
.