第3章 犬、時々虎。
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ゲロゲロに甘い恋愛映画が始まった。
凄い、見てるだけで胸焼けしそう。
私の様な呪術師には無縁な話だな。
そんな事を思いながら頬杖をついて観ていた。
「………?」
空いている手を、虎杖に何故か握られた。
びっくりして虎杖の方を見たら
学校では見た事のない、男の顔をしていた。
「……嫌?」
「……………いや、じゃない」
「そっか」
そう言って虎杖はまたスクリーンへ目を向けた。
握り方が、今まさにやってる映画のカップルのそれ。
緊張して、手汗かきそう。
これで意識しているのが私だけだったら
恥ずかしくて明日は仮病使っちゃいそう。
———スタッフロールが流れてる。
正直、虎杖に手を握られた辺りから
気が気じゃなくて内容が入ってこなかった。
「いやー!面白かった!ありがとな雪奈!」
「どういたしまして」
「雪奈はどうだった?」
「………正直、私にはあんな恋愛
出来ないだろうから、内容が入ってこなかった」
「まーじか!なんかゴメン!
でも映画って大体フィクションだし
それを楽しむのも映画って感じだよね」
「それは言えてる」
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