【Bプロ】Wrapped in love【金城剛士】
第2章 2
B-projectのメジャーデビューが発表されるのが、1ヶ月後。
デビューとほぼ同時に行われる結婚式場のイベントで、個々のグループでパフォーマンスをするのが、1ヶ月半後。つまり、いま練習を完璧にしておかないと、デビュー後には取材や撮影で練習の時間など取れないので、かなりギリギリのスケジュールなのだ。
それで、バンドをやりたいというチームがあるらしく、その楽器の指導をするのがわたしの役目なのだ。いくら夜叉丸さんの頼みとはいえひと月ちょっとで初心者に観客に向けて演奏できるレベルを仕上げるとか無理だと思ったので、断っていたのだ。
「それが、あの子のチームとはね。」
今日は顔合わせと練習初回の日だ。
あれから剛士くんとは連絡とってない。
久しぶりに話すのがなんだか楽しみでもある。
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夜叉丸さんがわたしを紹介してスタジオに入った時の剛士くんの反応といったら。
ガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がって、はっと口を覆ってすぐ座ったの。
わたしと夜叉丸さんは同時に吹き出した。
一拍遅れて青い髪の子もくすくすとちいさく爆笑して。
ピンクの髪の子はキョトンとして、頭の上にハテナが沢山浮かんでるのが見えるようだった。
「あなたたちの演奏の講師です。 といいます。よろしくお願い致します。」
丁寧に頭を下げて見せた。
そして打ち合わせが始まった。
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「では10分休憩の後、実際に演奏してみましょう。」
そう言ってお開きにして、わたしと夜叉丸さんは隣接している喫煙室に入った。
火をつけて業務用のスマホをチェックし始めたのも束の間に、扉が開き剛士くんが入室してきた。
「ちょっと!剛士!ここは未成年入室禁止よ。」
夜叉丸さんが珍しく目を釣りあげて怒った。
そりゃそうだ。スキャンダルに繋がりかねない。
「げほっ…さんに、用がある。」
剛士くんは煙を手でぱたぱたと払いながらわたしに話しかけた。
わたしは至福の一服を邪魔されてご機嫌急降下だ。
「はあ…一服したら行くから。外で待ってて。」
「あざっす。」
剛士くんが出ていったあと、わたしは舌打ちしてまだ半分しか吸ってないタバコを消した。
「行ってらっしゃーい♪」
夜叉丸さんは面白がりながらにっこり笑って手を振った。