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【Bプロ】Wrapped in love【金城剛士】

第1章 1


「…っなんでだよ!」
「ふふ。だって、それなんか面白いの?あんた、アイドルって。ちゃんと音楽知ってんの?」
「音楽が職業だからそれなりに勉強はしてるつもり…です。」

軽く口に手を当てて笑った彼女が可愛くて目を見張った。
周りはもう俺らに飽きてそれぞれで盛り上がっている。
若しくは、野暮だと思われたのか。
図星な気がして、イラついてきた。

「じゃあ、俺の歌聴いてください。話はそれからだ」
「いつ聞くの?もうわたしと君は会わないかもね」
「じゃあ、今日。今日聴けよ。」

俺は身を乗り出して彼女に迫った。

「俺はあんたの音楽をもっと知りたい。」

彼女は呆れたように息を深く吐いて、それからタバコに火をつけた。

「それ、わたしになんかメリットある?」

ふうっと俺の顔に煙を吹きかけたあと、残っていたビールを飲み干して、まだつけたばかりのタバコをもみ消した。
俺は吐息をかけられて真っ赤になった顔が煙で隠れて良かったと思いながら噎せた。噎せたから赤くなったんだ。煙と周りの視線を追い払うように手でパタパタと周りを仰いでいるうちに、彼女は上着を羽織ってカバンを手に出口まですたすたと長い脚で歩いていた。

「興ざめ。帰るわ。」
「待てよ!」

俺は追いかける他なかった。タクヤ、わりぃ。後は頼んだ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

タクシーを呼ぶ彼女の横に立ち代わりに手を挙げた。
タクシーが泊まって扉が開くとすかさずカバンを奪った。
驚いたように手がぴくりとしたが呆れた様子の彼女の後を追ってタクシーに乗った。もうどうにでもなれ。
タクシーに乗ってる間は無言だった。ただ、気だるそうに窓の外の夜景を見る彼女の横顔を時々盗み見た。

「着きましたよ」
「カードで。」
「ありがとうございます」

降りてから俺はおそるおそる口を開いた。

「後で払います。」
「いいよ。ガキのくせに無理すんな。」

大きなマンションのエントランス前。
“大塚”と書いてあるから山手線のあの大塚なんだろう。

「どうぞ。」

彼女に言われるがまま、オートロックの中に入った。
頭の中が徐々にぐるぐると混乱してくる。
こいつ、どういうつもりだ?


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