【Bプロ】Wrapped in love【金城剛士】
第3章 3
「顔洗ってくる。」
「ん。洗面所で倒れんなよ。」
剛士くんって心配性なんだ。なんか優しくて歯痒い感じ。
熱があるから、変な事考えてる。絶対、熱のせい。
「レトルトのお粥買ったけど、食えそうか?」
常温のスポドリを渡しながら、金城くんが言った。
「うん。食べる。お腹空いた。」
「ちょっと待ってろ。」
わたしはなぜか剛士くんの広い背中に手を伸ばして、引っ込めた。
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剛士くんが用意してくれたお粥を食べて、スポドリ飲んで、顔も洗ったし歯も磨いたし、だいぶスッキリしたけどまだ熱があるらしい。
「あとは熱下がるまで寝てろよ。」
「うん、分かった。ありがとうね。」
宵闇に消える剛士くんの背中を見送って、鍵をかけた。
なんか、色々ありすぎて、あと色々滞ってて、家の中を見渡してごちゃごちゃだったものが全部片付いてて、顔が真っ赤になって倒れそうだった。
「寝よ。」
何もかも脳みそから追いやって、ただ寝ることをした。
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バッチリ体調を治して、ライブ当日を迎えた。
なんの不安もなかったけど、やっぱりあの子たちはやってのけた。
未熟な演奏ほどライブは盛り上がる。完成されたCDじゃなくて生きた音楽を聞きにくるんだ。ファンの熱も相まって、大成功に終わった。
ライブが終わってからも仕事なので現場の片付けの手伝いや結婚式場の人と今後の話などを詰める会議にも出席した。帰りは打ち上げがあったが病み上がりなので辞退した。
そうして家に帰ってきて一服していると、剛士くんから電話が来た。
「…はい。」
「お疲れ様です。今から行く。」
「どこ居るか知ってんの。」
「家だろ。打ち上げ辞退したって聞いた。」
「うん。した。じゃ家にいるから。」
わたしがメッセージを気が向いた時しか返さないのもう覚えたんだ。
そう考えてにやっとした口元を慌てて袖で隠した。
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「なんで来たの。」
「話がある。」
開口一番。とりあえずコーヒー出してダイニングテーブルに座った。
「デビューしたし、これからは月収が上がる。高校卒業したら完全にアイドル業になる。でも俺は自分で音楽も作りたいんだ。」