第9章 ifの話(PandoraHearts/エリオット)
「バルマ公がそんなことをするなんて……言っちゃ悪いが考えられないな………」
ギルの言葉は、彼らの気持ちをはっきり表していただろう。
オズは、オレもそう思ったと少し笑い、けれど必死に手紙を読むに目を向けて、でも、と続ける。
「バルマ公はのためにやったんだよ。」
「のため……?」
「うん。バルマ公にとって、は妹みたいな存在なんじゃないかな。その彼女が大切な人を亡くすことで哀しんでほしくない。助けられるなら助けたい。そんな感情からだとオレは理解したんだけど………どうかな、?」
そう言ってオズは、ちょうど手紙から顔を上げたと目を合わせる。
彼女の目には大粒の涙が溜まっていたものの、しかしその瞳は何かを決心したような強い光を宿していた。
「………ここまでしてくれたら…もうバルマ公に頭が上がらないわ。」
少し困ったように、けれど嬉しそうに微笑む。
物心ついたときから自分に住むところはなく、空腹で倒れそうになったところをバルマ公に助けられた。
勿論彼がを助けたのは偶然などではなく、彼女が100年前の謎に関連する、バスカヴィルと関係の深い一族の末裔であり、一族に引き継がれるチェインを所有していたから。
そういう理由であったのに、会ったときからバルマ公はを妙に気に入り、ちょうど従者のいなかったエイダの従者として付け、ラトウィッジにも通わせてくれたのだ。
彼がいなければ今のはいないし、ましてやエリオットに会うこともなかった、そんな存在だった。
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