第8章 愛ゆえの(マギ/ジャーファル)
「全く……貴女という人は…」
そう言ってため息をつくジャーファルはすぐ目の前。
あのあと彼の私室に入れられた途端何故か壁に押しつけられ、は全く身動きが出来ない状況だ。
「…ジャーファル?」
「あれほどシンの手伝いはするなと言っていたのを忘れましたか、?」
吐息を感じられるほど近くで名を呼ばれ、背筋を電気が走ったかのように震える。
何故自分が怒られているのか全くわからないが、こういう怒っているときの彼の声はとてつもなく色っぽくて、困るのだ。
「……そんな怒んないでよ…」
「怒ってません。ただ、シンが仕事をしないせいでの負担が増えるのが嫌なだけで。」
「私は負担だとは思ってないわ。」
ジャーファルがを誰よりも愛するがゆえの憤り。
それはわかるのだが、ここまで怒られるとも心外なようで、眉を潜めて上目がちに反抗を示し、すっと目を伏せる。
「」
「……………何」
諭すような口振りで名を呼ばれるが、はむすっとしたまま顔を上げようとはしない。
……まだ何か言われるのかしら。
そんなことを思いつつも、いまだジャーファルの言い分に納得できない。
そのまましばらく、沈黙が続いた。
「…………はー…」
ジャーファルが観念したように息をはく。
恐る恐る顔を上げようとすると、の横につかれていた手が離れ、彼の顔を見る前にぎゅっと抱き締められた。
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