第8章 愛ゆえの(マギ/ジャーファル)
ジャーファルの銀色の髪が顔に当たり、ふわっと彼の匂いがする。
さっき苛々していたことなんてぶっ飛ぶくらい安心するなあ、なんて思っていると、耳元で、と呼ばれた。
「…なあに?」
「すみません、。私は駄目ですね。貴女が絡むと、理由がなんであれ苛々してしまう。が自発的にやったとはいえ、結果的にはの手を患わせただけで、シンに憤りを感じてしまうんですから。」
…つくづく思っていたが、彼はその草食的な外見とは裏腹に、果てしなく独占欲が強いらしい。
けれど、そんな彼の行き過ぎた気遣いも自分を想ってのこと。
まるで必死に手離しまいとぎゅっと腕に込められた力に、思わず頬が緩んでしまう自分は、もはや末期なのだろうか。
「ねえジャーファル」
「……はい」
「私は、シン様が本当にどうしようもなくて強くもないクソ野郎だったなら、書類やってあげたりなんかしないの。」
「…………」
「けどシン様の治めているこのシンドリアは、こんなにも平和で賑やか。それはそのまま彼の力量を表すのでしょう?……だから私は書類をやってあげようと思える。ジャーファルも、そうでしょ?」
そう、彼に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
彼女には何でもお見通しのよう。
ほんとに、言葉にできないくらいいとおしくて、艶やかな彼女の髪に指を絡めると、はくすぐったそうに体を震わせる。
「ありがとうございます、。」
「ふふ、なんのこと?」
顔を上げて悪戯な笑みで笑うに、もはやジャーファルの理性が耐えられるわけもなく。
有無を言わさずを抱き上げ、寝台へ直行する。
「え!? ちょっと、ジャーファル…!」
「かわいすぎるが悪いんですよ?」
そう言ってを優しく寝台に降ろし、クーフィーヤをはずす。
「待ってまだ寝る時間じゃ…」
「知らないな。それに、さっきしばらくシンの部屋にいたこと、少し妬いたからね。………覚悟して、。」
もはやS心が働いているのか、理由が無理矢理すぎてよくわからない。
けれど、最後の甘い言葉を耳元で囁かれては、彼に体を委ねるしかなかった――――。
Fin....