第62章 これからも家族3人で幸せに(❤︎)
「なんの騒ぎだ!?」
「兄さん!」
騒ぎを聞き付けて控え室に飛び込んで来たマドカは、目の前の状況に驚いた顔を浮かべる。
「これは一体どういう状況だ?」
「マドカさん、そいつ不審者。カノに刃物向けて殺そうとした。ナイフはそこに落ちてる」
カノを背に庇いながら冷静に状況を説明するマイキー。床に転がっているナイフを見たマドカはスッと目の色を変え、まだ蹴られた痛みで動けない男に近付くとうつ伏せのまま、床に押さえ付けた。
「は、離せ…!!」
「それ以上暴れると腕の骨折るぞ。痛みで悲鳴あげたくなきゃ大人しくしろ」
「っ…………」
ギリッと拘束された腕に力が入ると、男は痛みで顔を歪める。
「俺の大事な妹を傷付けんじゃねーよ」
マドカもマドカで怒らせると怖い。かつて『皇帝』の異名で恐れられた男は、喧嘩はしないと決めたものの、大事な家族を守るためならどんな手段も選ばない。
「っ、佐野万次郎…!!」
「あ?何でオレの名前知ってんだ?」
「お前は邪魔なんだよ!!彼女は俺と結婚した方が絶対に幸せなんだ!!なんで俺から彼女を奪う!?彼女は俺と出会うべきだったのに…!!」
「何言ってんだテメェ」
「呪ってやる!!彼女を愛したお前を一生呪ってやるからな…!!」
「ちったぁ黙れねぇのか!!このイカレ野郎!!いい加減に顔見せやがれ!!」
叫ぶ男のフードをバッと剥ぎ取る。そして男の顔が明らかになった瞬間、カノは驚きのあまり、言葉を失った。
「…お前、その顔どこかで…」
「あが…つま…」
「え?」
「吾妻…悠生…」
信じられないというような顔でカノは悠生をじっと見つめている。
「吾妻って…」
マイキーもその名前で気付いたのか、悠生を見て驚いた顔を浮かべた。
「そうか…君だったのか。あの日、私から大事なものを奪ったのは…っ!!」
その男はかつて、マイキーから記憶を奪い、カノに一方的な愛を押し付けて自分のモノにしようとしていた──吾妻悠生だった。
「立てよ、お前は警備員に引き渡す。こんな大切な日に最悪なことしてんじゃねぇよ。妹の晴れ舞台をぶち壊しやがって…絶対に許さねぇからな」
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