第62章 これからも家族3人で幸せに(❤︎)
「でも邪魔者もいた。同じ病院で働いてる医者。そいつは気安く君に話しかけたり、頭を撫でたりしてた。見るたびに腸が煮えくり返りそうだったよ」
「(きっと兄さんのことだな…。たまに会うと頑張れよって頭を撫でて元気をくれたりする。)」
「だから君に近付く奴は誰であろうと殺そうと思った」
「!!」
「今日もアイツの姿を見かけたよ。周りに人が多くて二人きりになれる隙がなかったのが残念だ」
「(やっと…見つけた。コイツが兄さんを殺した犯人だ。こんな身近にいたなんて──!!!)」
ギリッと歯を噛み締める。怒りで震える体を必死に抑え込み、乱れる心を落ち着かせるために深呼吸をした。
「…今すぐ出て行って。そして二度と私の前に現れないで」
「それはアイツと結婚することをやめないってことか?」
「当たり前でしょ。私はあの人と幸せになる。この決意だけは絶対に揺るがない」
「…どうして分かってくれないんだよ。こんなにも君のことを愛してるのに…!!」
「一方的な愛の押しつけは迷惑だよ」
「俺は君じゃなきゃダメなんだ!!君だけが俺を救ってくれるんだ!!だから俺達は一緒にいないとダメなんだよ…!!」
「いい加減にして!!!」
身勝手な相手の言葉にカノも怒りを爆発させた。声を張って怒れば相手は驚いたのか、目を見開いて息を呑む。
「迷惑だって何度言えばわかるの!?君のやっていることはストーカーだ!!こんな場所まで乗り込んできて自分がおかしいことに気付けないの!?」
「おかしい…?俺のどこがおかしいんだ?至って普通だよ。それにストーカーでもない。ただ君と結婚したいって言ってるだけだろ?」
「それがおかしいって言ってるの!!」
「おかしいのは君だ!!俺以外の男と結婚するなんてどうかしてる!!どうして君の運命の相手が俺だって気付かない…!!」
激昂した男は隠し持っていたナイフを取り出し、こちらに向ける。人を殺す道具を目の前に突きつけられるのは初めてじゃない。だからカノは落ち着いた様子で男を睨んだ。
「俺と結婚するって言えよ。アイツと別れて俺と一緒に幸せになるって言え…!!」
「はぁ…本当にしつこい。」
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