第62章 これからも家族3人で幸せに(❤︎)
「…誰?」
「やっと会えた」
「(まずい。扉を塞がれてる。)」
結婚式の参列者ではないと瞬時に理解し、椅子から立ち上がって相手を警戒する。
「ずっと会いたかったんだ」
「来ないで。それ以上近寄ったら人を呼ぶ。」
嬉しそうな声で近付いて来る相手を強めの口調で叱咤する。カノに止められた相手はスッと無表情になると苛立ちを含んだ声で言った。
「…なんであんな男と結婚するんだよ」
「え?」
「君の結婚相手に相応しいのは俺なのに!!」
「何を訳のわからないことを…」
「誰よりも近くで君を見てきた!!君を1番に理解しているのは俺だ!!それなのにあんな男が君の結婚相手だなんて認めない…!!」
「(話が通じない。…嫌な記憶を思い出す。)」
「俺なら君を幸せにできる!君は俺と幸せになるべきだ!だから結婚式を中止にしてよ!」
「何で中止にしないといけないの?そもそも誰だよ君。そんな黒いフードで顔なんか隠して…」
ふと違和感に気付く。目の前の人物が着ている黒いフードにどこか見覚えがあった。
「……………」
無意識に心臓が逸り、嫌な音を立てる。
「(なんだろう…このザワつく感じ。コイツの着てる服、どこかで──……)」
"ガン!!"
「っ………!!?」
ビクンッと体が跳ねたと同時に思い出す。最初の世界線で初めてマドカに会えた日の夜。食事を終えて立ち寄った公園でマドカは何者かに鉄パイプで殴り殺された。その時の相手も同じ黒いフードを被って顔を隠していたのだ。
「まさか…君…」
「病院で初めて君を見た時、なんて笑顔の似合う人なんだろうって思った。こんな人が俺と一緒になってくれたら嬉しいなって」
「……………」
「それから怪我もしてないのに、君に会うためだけに毎日病院に通った。男の患者と話してる時は流石に殺意が湧いたけどね」
相手の話など耳に入らない。カノの頭の中はあの日マドカを殺した人物のことでいっぱいになっていた。綺麗な紫色の瞳にユラ…ッと憎しみの色が宿り出す。
「わざと財布を落として君に拾ってもらったことがあるんだ。優しい声で"落としましたよ"って言ってくれたね。今でもその財布は大事に保管してるんだ」
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