第5章 禁断の扉(柊魁明)🔞
そして、あれよあれよという間に男女の関係になり
今に至る
「俺も寝るかなぁ…」
タバコの火を消して軽くシャワーを浴び直して床に就く
冷たい布団にはもう、慣れっこだ
翌朝
「あらあなた。その首筋の…どうしたの?」
昨夜名前さんにつけられたキスマークを
妻にみつけられてしまった
「ああ、虫刺されか?昨日は無かったんだけどな」
とっさに苦し紛れの嘘をつく
「そう。もうそんな季節なのねー。私も気をつけないと」
あっさりと信じる妻に、少し動揺する
それとも、本当は気づいているが、気づかないふりをしているのか
俺には分からない
「いってきます」
俺よりも先に家を出る妻
文字通りの仮面夫婦だ
お互いに仕事が忙しく家には寝に帰るだけの状態が
何年も続いているし、これと言って
夫婦の会話もない
もはや夫婦と言うよりは同居人だ
さらに俺は不倫をしている
裁判でも起こされようものならセックスレスに加えて
不貞行為で俺の負けが確定してしまう
「柊さん、おはよっ♡」
どんよりとした気分を名前さんが吹き飛ばしてくれる
彼女といると癒される
このまま夫婦関係を継続させたままズルズルと不倫を続けようか
それとも妻と離婚して、名前さんと真剣に交際しようか
頭の中がぐるぐるする
いっそ、彼女が妊娠していたら、妻とは揉める事になるが
離婚がスムーズに行くかもしれない
そんな最低な考えまで浮かぶ
この日は何をしても集中できず仕事に身が入らない
仕事が終わって名前さんからの食事の誘いも
また今度な、と断りまっすぐ家に帰った
夕食後、妻から「話があります」と切り出された
俺は嫌な予感がし、見事に的中した
「あなた、不倫してるわよね?」
そう言って妻は数枚の写真をテーブルに並べる
彼女と食事をする写真に車の中でキスをする写真
ホテルに入っていく写真…
決定的な証拠に、俺は何を言っても言い訳にしかならず
言葉を詰まらせていると、妻が続ける
「探偵を使うような真似をしてごめんなさい。あなたが不倫をしていることは分かっていたけど、どうしても証拠がなくて。やっぱりあなたにとって、子供が産めない私は足枷でしかなかったのね。」
すっと目の前に1枚の紙が差し出される
離婚届だ