第3章 迷宮の十字路
毛利小五郎御一行を見送るために京都駅へ来た私と綾警部。少年探偵団も一緒に帰るそうだ。
綾警部は子ども達にシマリスちゃんを手渡す。シマリスちゃんを触れて喜ぶ子ども達。
「かわいいよね~。連れて帰っちゃおうかな~。」
シマリスちゃんと頬ずりする歩美ちゃん。可愛いよね。分かるよその気持ち。
「あきません。一番の親友なんやから」
「警部さんもしかして、人間のお友達少ないの?」
歩美ちゃんの何気ない言葉にショックを受ける綾警部。子どもの言葉は嘘偽りないまっすぐで残酷なところがある。
私は綾警部に背を向けて小さくふいてしまった。なんとなく背中に視線が刺さる。
「ねぇちょっと」と呼ばれる。園子ちゃんだ。
「あの警部とはどんな関係なのよ?」
「それ!うちも気になる!」
和葉ちゃんも会話に入ってきた。どんな関係って。
「上司と部下?」
「本当に『上司と部下』だけなんですか?」
何故か蘭ちゃんも入ってきた。何?この疑うような視線は?
「あの警部のこと好きなんでしょ?」
園子ちゃんがとんでもないことを聞いてくる。好き?私が?綾警部のことを?
「いや、好きとかよく分からない。ただ、」
三人して驚きの顔をしている。なんでそんなに驚くの?
「『ただ、』何?」
「ただ、一緒に動いたり、仕事したりするのは嫌な感じがしない。そう思うだけ」
「これは、あの警部も大変ね」「こんなに近くにいるのに」と呆れ顔になる園子ちゃんと和葉ちゃん。私、変なこと言ったか?
二人に対して蘭ちゃんはどこか寂しそうな顔をしている。すると近くでジュースの中身が噴き上げて顔を汚しているコナン君。蘭ちゃんは親さながらハンカチを出して拭いてあげようとしたが、ハンカチを見て動きを止める。
「新一兄ちゃんにお願いしたんだ。『平次兄ちゃんのふりをして和葉姉ちゃんを助けて』って」
工藤新一が来てたの?あの鞍馬山に?私は見てないけど。
コナン君の言葉を聞いて嬉しそうな表情になる蘭ちゃん。園子ちゃんに聞くと最近は事件事件と全く帰ってこないだとか。会えなくて寂しい思いをしてると。