第3章 迷宮の十字路
府警本部へ戻ってきて捜査をと思ったが綾警部に止められてしまった。その辺の見回りへ行ってこいと。たぶん頭冷やしてこいの意味だと思う。
その辺と言われたから桜の木が立ち並ぶ道をひたすら歩いたら鴨川を超え、仏光寺付近まで来てしまった。日が落ち始めた時間もあってか観光客の姿はほとんどないが、住民と思われる人や親子連れの姿がちらほら。
仏光寺の横を通りかかったとき中から出てくる人影が。
「蘭ちゃん?」
「あ!黒澤刑事!」
こんな時間に何故こんなところに?しかも一人で。
「黒澤刑事、コナン君と服部君を見ませんでしたか?」
「いや、見てないけど。もしかして迷子?」
でも、服部平次も一緒なら迷子はありえないか。
「姿が見えなくなってからどこ行ったのか分からなくて。あと、和葉ちゃんに電話しても出なくて。仏光寺に行くみたいなことを話していたらしくて来ても居ないし」
焦っているのか。とりあえず落ち着かせなくては。すると蘭ちゃんは道の端に目を向ける。そこには『玉龍寺跡』と書かれた碑が。
「この『玉龍寺』って今どこにあるんですか?」
「たしか、鞍馬山の奥の方にあったはず。でもずいぶん前に廃寺になったようなことを交通部の人から聞いたような」
「鞍馬山、、、」
すると蘭ちゃんは走り出して行ってしまった。
え?蘭ちゃん?鞍馬山になにかあるの?なんとなく嫌な予感がする。あのまま一人で行かせたら、また。そう思ったときには蘭ちゃんを追って走り出していた。
とりあえず綾警部にでも連絡をと走りながら携帯を取り出し電話をかける。
「“はい、綾小路です。空はん、どこほっつき歩いてるんです?ええかげんもう帰って”」
日が落ち始めても帰ってこないことに少しご立腹の様子。これは後でお小言があるかもしれないが、それは置いといて良い。
「綾警部、戻るのは少し遅くなります」
「“空はん、今どこでなにしとるんです?”」
走りながらの会話に綾警部は不思議に思ったのだろう。先ほどより声が変わった。
「毛利さんの娘の蘭ちゃんがコナン君と服部平次がいなくなったと、探していて。今どこかへ向かっています。」
「“服部平次君なら少し前に病院へはこばれました”」