第3章 迷宮の十字路
「そのシマリスがトリックの鍵だったんだ。千賀鈴さん、あんたはお座敷の途中でトイレに行くふりをして納戸で桜さんを殺害。戸棚かなにかに隠していたシマリスの身体に短刀を結び付け地下のガラス戸から離したんだ。シマリスは禊川に飛び降り川下へ向かう。それを川下で待っていた警部が拾い上げ、後からその短刀で平次を殺害しようとしたんだ」
いや待て。辻褄が合っているが、私の中では全く合わない。
「そっかー!あの水音はシマリスが飛び降りた音だったのね」
園子ちゃんそんな事言ってたな。水音がしたと。それで川の中も捜索したんだよな。
「桜さん以外の殺しも2人の共犯だ。警部さん、あんた弓は?」
「そんなややこしいもん、やったことあるか!」
綾警部が声を荒らげる。当然だ、的外れな推理で自分も犯人呼ばわりされているんだから。聞いてる私も沸々と込み上がってくる。
「本当ですかねぇ。でも千賀鈴さん、弓をやる人はここが矢尻で擦れて怪我をすると聞きました」
千賀鈴さんの手を取り、親指の付け根に貼ってある絆創膏を見る。弓のせいで怪我したと言ってたな。
「確かに、この矢枕の怪我は弓をやっとるせいですけど、まだ始めたとこやし人を射るなんて絶対でけしまへん」
指をさすりながら答える千賀鈴さん。毛利小五郎は弓やってる人全てが親指の付け根に怪我をしてると思っているらしい。
「私もそう思うな、ここを怪我するのは初心者の証拠なんだって弓道部の友達から聞いたことあるよ」
蘭ちゃんが隣から口を出す。
「それに殺害されたのなら形見分けは?」
白鳥警部も先ほどの電話で目暮警部が言っていた事が推理に入っていない事には気付く。
「毛利はん、あんた本気でこの娘を犯人やと思ったはるんですか?冗談やおへん!舞妓は芸事やお座敷で忙しいのどす。人を殺してる暇なんかあらしまへん!」
山倉さんが強く出る。親代わりとなって育ててきた娘が犯人呼ばわりされているんだ。
「いや、ですから」とまだ推理を続けようとしてるのを見て私も抑えていた感情がさらに上がる。
「ねぇねぇ、シマリスだけどあんな小さな身体で短刀は運べないんじゃない?」
「うるせぇ!だったら証拠を見してやる!!」
何をするのだろうか?