第3章 迷宮の十字路
服部平次と江戸川コナンくんに見られたのが嫌だったのか綾警部の歩き方が速い気がする。頭一つ分以上身長差がある警部の速歩きについていくのに小走りになる。
すると綾警部のスマホが鳴る。電話のようだ。
「先斗町の御茶屋で殺人事件が起きたようや。すぐそこなんで一緒についてきてもらえますか?」
本当は勤務外になるのだがすぐ近くだからいいだろう。早いにこしたことはない。それに美和子がいたら「警察に休みなんて関係ないでしょ!」と言われそうだ。
頷き「急ぎましょう」と言い途中警官二人と合流して現場の『桜屋』へ向かう。
お店の引き戸を開けると音が鳴って女将さんと思われる人が出てくる。意外と大きい音が鳴るんだな。
一歩踏み入れると、あぁ“におう”。殺人現場特有の“におい”が。
「京都府警の綾小路です」「同じく黒澤です」
「ごくろうさんどす、どうぞ」
女将さんの顔色が悪い。殺人事件が起きたのだからそうなるだろう。
「君は表を」と警官一人に指示をだし中へ入る。地下の階段から服部平次と江戸川コナンくんが上がってくる。この二人が居たお店だったのか。てことは毛利小五郎も居るのか。依頼先で事件とは運が良いんだか悪いんだか。
「こらぁ京都府警の刑事はん。えらい早うお着きでんな」
嫌味っぽい言い方するなぁ。綾警部は無視する。
「ねぇ、今日シマリスは?」
「いつも連れ歩いとるわけやない」
コナンくんの子供っぽい質問に少し強めに答える。シマリスちゃんのことは答えるんだ。まぁ事件現場にペットは連れ込むのはさすがにしないよ。
近づくにつれて“におい”が強くなる。
案内された場所は地下の納戸。棚には箱がキレイに並べられているが、所々物色された跡がある。被害者がやったのだろうか。
その場にはやっぱり毛利小五郎がいた。元刑事らしく現場を保存してくれていたようだ。
「京都府警の綾小路です。ご協力ありがとうございます」
「同じく黒澤です」
今日何度目か分からない挨拶。
「お初にお目にかかります。毛利小五郎です」
酒臭い。ここは御茶屋。先ほどまで舞妓さんとお座敷遊びでもしていたのだろう。にしてはシャキッとしてる。現場だと酔いも醒めるのだろう。