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京都府警の女刑事

第3章 迷宮の十字路





歩き続けて今は鴨川と禊川の間の道。川越しに見える桜はまた違って見える。ここもカップルが多いわけだが…。


禊川の向こうは先斗町。飲食店や御茶屋やお土産屋が建ちならぶ歓楽街。時々、三味線の音や舞妓さんの唄が聴こえてくる。


「少し曇ってますな。でもこれから晴れて、ええ月が見えるやろ」


綾警部が言うとおり少し曇っていて月が薄っすらとしか見えない。月明りに照らされた桜はまた格別に見えるだろう。


「桜見ると、警察学校を思い出します。あそこの桜もキレイでした」


「警視庁の警察学校か?」


頷く。日本警察のシンボルマークとなってる桜。もとい日章。「かげりない~」や「清らかな~」といった意味があるからか、警察学校には桜の木があった。


でも、それとは関係なくあそこの桜はキレイだった。初めて見たときそう思った。


「夜眠れなくて、教官に見つからないように部屋を抜け出したときに…。月が出ていて、少し風もあって…。先客もいましたけど…」


なんでこんなこと綾警部に話しているんだろう。今まで同期以外に言ったことないのに。7年も前のことなのに。


突然、頭が重たくなった。見ると綾警部の手が乗っているではないか。気づかなかった。


「すんまへん。空はん淋しそうな顔に見えたからつい。嫌やったですか?」


「……いや、嫌では、ないです……」


基本的に誰かに触られるのは嫌なんだが、綾警部は不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ落ち着く感じがした。


警部の腕を伝ってシマリスちゃんがこちらに来た。肩を一周する。何か言うように鳴いているが私には分からない。


「空はんが淋しそうな顔するとこの子も悲しくなります。もうそんな顔はやめて桜見物を楽しみましょ。月も出てきたさかい」


雲がだんだんと晴れて月が出てきた。さっきよりも明るくなりその場の雰囲気が変わった気がする。


さっきの気分がどこかへ行ったようだ。


どこからか視線を感じる。振り返ると先斗町のお店の窓から服部平次と江戸川コナンくんがこちらを見てるではないか。綾警部も気づいたのか歩き出した。


その少し後、川に何かが落ちる音がした。よく見るとペットボトルが流れていく。キレイな川にゴミを捨てるとは、心ない人間がいるものだ。


拾いあげることもできず、流れていった。


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