第3章 迷宮の十字路
それから捜査を再開するもこれといった進展もないまま1日が終わった。こんなだと市民から見たら税金泥棒と言われてしまうのだろう。
PCの電源を落としながら帰る準備をする。そういえば鴨川沿いの桜が満開とか誰かが言っていたな。SNS用に写真でも撮りに行こうか。でもあそこはカップルの定番だからそうゆう人たちがうじゃうじゃ居るんだよな。
「空はん、帰る前に少しええか。付き合ってほしいところがあるんや」
綾警部から声掛けてくるとは捜査の何かだろうか。断る理由もないので一つ頷く。
「ほな、行こうか」と付いて行けば会話もなく歩き続ける。鴨川がある方面だ。こんな時会話を弾ませることができたら良いのだろうけど、あいにく私にはできない。
道沿いに植わってる満開の桜が街頭に照らされて街中なのに幻想的に見える。
かなり歩いたところで気がつく。鴨川に着いたではないか。カップル多いな…。
「鴨川の桜を見たかったんやけど、ここはカップルが多いさかい一人で来るのはちょっとなぁ…」
捜査とかではなくただただ鴨川の桜を見たかっただけらしい。私も見たかったから、まぁちょうどいいか。
綾警部も相手の一人や二人いそうなのに。公家出身で国家公務員1種試験に合格したキャリアで警部。背も高いしキリッとした切れ長の目で見た目も悪くない。話し方も上品。日本ではこうゆう人が人気なのだろ。でもあれか、シマリスを連れているから奇妙な目で見られるのか。
いつの間にかシマリスちゃんが警部の肩に乗っていた。いつ見てもかわいいな。そして思い出す。
「綾警部、ちょっといいですか。桜の木の方に」
警部を引っ張り桜の木の近くに。そしてシマリスちゃんを誘導して写真を撮る。桜をバックに桜を眺めるシマリスちゃんの姿。かわいい。警部の顔は入ってない。入ってもせいぜい肩ぐらい。
「綺麗に撮れましたか?」
確認しながら一つ頷く。我ながら上手く撮れた。待ち受けにしてしまおう。
綾警部がシマリスちゃんと一緒に覗き込んでくる。
「その写真、私にも貰えますか?」
「いいですよ。送ります」
本当にシマリスちゃんが好きなんだな。