第3章 迷宮の十字路
「江戸川乱歩とコナン・ドイルみたいだね」
私がそう言うと少し表情が固くなったけど、気にしないでおこう。ちなみに江戸川乱歩とコナン・ドイルは名前だけ知ってるぐらいだ。小説は読んだことない。小説を元にした映画やドラマなら見たことあるが。
「京都には何しにきたの?」と聞くと怖がらせただろうか、さらに後退りをしようとしてる。警察と聞いて威圧感でも感じているのだろうか。この無表情な私の顔でさらに威圧感が増しているのかもしれない。
「依頼を受けたおじさんと一緒にきたんだ。毛利小五郎って知ってる?僕いろいろあって今、小五郎のおじさん家で暮らしているんだ」
いろいろあって親戚でもない毛利家で過ごしているとは相当なことがあったのだろう。変に深入りしない方が良い。私も似たようなものだ。
「そうなんだ。でも、警察の真似事するのは危ないよ。何かあったら、その小五郎のおじさんや家族の人が心配するよ」
「う、うん」と悲しそうなでも納得したような顔をしてるコナン君を見て、まだ残っていた飴細工を渡して頭を撫でて立ち上がる。
「よろしおすな」と言い歩いていく綾警部に続く。服部平次に軽く睨みきかせて。
少し離れたところで「どこにもけったいな刑事はおるもんやな」と聞こえたのは私だけのようだ。
その後に「あのねえちゃんが刑事とはなぁ。まだ学生に見えるで」と聞こえたのは聞かなかったことにしておきたい。
学生に見えて悪かったな。身長がまあまあ低いからそう見えるだろうがこれでも25だ。コナン君からしたらおばさんだぞ。
「これで少し大人しゅうしてくれたらええんやけど、たぶん無理やろうな」
「あの江戸川コナン君も好奇心旺盛な子みたいですね」
五条大橋で服部平次と話していたときとは全然違う感じがした。子どもらしい喋り方がまるで演技してるみたいだった。
少し興味が湧いた。あの人が画像付きで尚且つ『助けになってあげて』と言ってくるぐらいだ。
また会うことがあるはずだから、その時は少し手伝ってあげようか。綾警部や京都府警の人たちに気づかれないようにすれば大丈夫なはず。