第3章 迷宮の十字路
『麩屋町通り』と言われても一つの『場所』ではなく一つの『通り』を指すため、どこへ行けばいいのかな分からない。とりあえず『麩屋町通り』と言われる通りを歩いていたら綾警部と合流した。
「なんで麩屋町通りなんですか?」
「この先に『弁慶石』があるんや。弁慶が腰掛けた石や、比叡山から投げた石と言われる石や。この辺りで弁慶に関係する場所言うたらもしやと思いまして」
『義経と弁慶』と言うワードだけでここを思いつくとはさすが綾警部。さすがキャリア、は関係ないか。私が知ろうとしないだけか。
京都に来てもう5年になるのに、通りはある程度覚えたのに『義経記』のように歴史や物語に関連するところは全然ダメだ。
アイツなら、アイツ等なら知ってそうだな。そうゆうの好きそうだし。
麩屋町通りを歩くこと少し、三条通りと交差する場所を曲がると目指している弁慶石がある場所。
よく見ると弁慶石の前に服部平次とあの少年がいた。本当に居るとは。
一通り見たのか道の端に停めてあるバイクに戻ってくる二人の前に立ち塞がる綾警部と私。
「京都府警の綾小路です」と警察手帳を見せて名乗る綾警部に続けて「同じく黒澤です」と警察手帳を見せる。
「『源氏蛍』の件でいろいろ調べとるみたいやけど、ここは大阪とは違います。素人は首突っ込まんことや」
服部平次に指を差しながら言う警部のポケットからシマリスちゃんが出てくる。服部平次と少年はびっくりしてる。うん、シマリスを連れ歩く人なんていないからね。それが普通の反応だよね。
手の甲にきたシマリスちゃんを撫でて少し満足げな警部。私は少年と目を合わせるようにしゃがむ。
「君、名前は?服部平次くんとはどんな関係なの?」
少年は後退りをするように一歩後に下がる。いきなりの質問でびっくりさせてしまったようだ。
「ぼ、僕は江戸川コナン。平次兄ちゃんとは親戚の新一兄ちゃんが仲良くてそれで知り合ったんだ」
「新一兄ちゃん?」とは誰だと首を傾げる。
「工藤新一だよ。東の高校生探偵で有名な」
なるほど。この少年は服部平次と仲良い工藤新一の親戚なのか。