第3章 迷宮の十字路
あれから再び綾警部と別れて、服部平次を追いかける。途中、五条大橋で小学校低学年くらいの男の子といた。
これから剣道の稽古へ行く子どもから竹刀を借りて、斬りかかっているではないか。少年も跳び避ける。なかなかいい動きをする少年だ。
「(あれ、あの少年は確か…)」
この前、送られてきたメールに添付されてた写真の少年だ。なんで京都に。旅行だろうか。にしても一人で行動とは親は一緒でないのか。
どうやら二人は知り合いらしく、親しげに話してる。気づかれないようギリギリまで近づき会話を聞く。周りの観光客とかの声で上手く聞き取れないけど、聞き取れたのは、、、
『おっちゃんの仇をとる』『盗賊団』『仏像』『絵』『義経と弁慶』
考えるに、大阪で殺された源氏蛍の備前のなんたらと知り合いの服部平次は事件解決をして仇をとろうとしてるらしい。それで京都に来ているようだ。ただ『仏像』と『絵』と『義経と弁慶』とは何だろうか。
ここは京都。様々な寺院がある京都には仏像も様々ある。義経と弁慶の舞台にもなってる場所もある。
そして『絵』とはなんだろうか。
そんなこんな考えていると、服部平次と少年はバイクに乗ってどこかへ行ってしまった。やってしまった。とりあえず綾警部に連絡しよ。
「“どうしましたか空はん”」
「すみません、服部平次を見失いました」
「“空はんが見失うなんて珍しいですな。それでは約束の○○○○ティラミスは無しや”」
はっと息を呑む。SNSを中心にテレビや雑誌で取り上げられている○○○○ティラミス。観光客やSNS映えを狙う人が多くなかなか手に入らない。
服部平次の追跡をする代わりに綾警部にお願いした。見失うなどこの約束がなかったことにされてしまう。それは避けたい。食べてみたい。
「で、でも会話の内容から『義経と弁慶』に関連するところを巡るようです。さっきまで五条大橋にいました」
「“義経と弁慶が出会ったのは五条大橋と言われてますからな。この辺りで義経と弁慶に関連するところ言うと、、空はん麩屋町通りに来てくれますか。そこで合流しましょ”」
電話が切られた。とりあえず、麩屋町通りへ向かうか。五条大橋から考えるとちょっと遠いな。