第1章 世界で一番幸せ【リヴァイ】
嘘をつけ、とリヴァイは心の中で毒づく。
巨人との戦いに明け暮れ、女としての喜びも知らずに、まだ十七歳にもならない若さで死んで、何が幸せだ。
家族に愛されて育ったことが一目で分かるような、笑顔の絶えない奴だった。
リヴァイを尊敬の眼差しで真っ直ぐ見つめ、名前を呼ぶと嬉しそうに返事をした。
空のカップを差し出すと、微笑みながら紅茶を注いでくれた。
リヴァイと目が合うと、いつもはにかんだように顔をほころばせた。
だがユズアの笑顔を思い出そうと瞼を閉じると、浮かんでくるのは広い野原で横たわっている最期の姿だ。
顔を自らの血で染め、何も映さない瞳は静かに閉ざされていた。
下半身は見るに無残な状態で、そこら中に血が流れていた。
鬱蒼とした野原の真ん中で、ユズアの周囲だけ日がよく当たり、全てを無慈悲なまでに鮮明に曝け出していた。
その映像はリヴァイの頭にこびりついて、生きていたころのユズアの姿を上書きしてしまう。
思い出せない。
あんなにいつも見ていたはずのユズアの笑顔が。
目を開けて、残像を振り払うように眉間にしわをよせる。
読み終わった手紙を折りたたもうとして、二枚目があることに気が付いた。
そこには文字は何も書かれておらず、一輪の押し花が貼り付けられていた。
黄色い花芯を白い小さな花びらがくるりと取り囲んでいる。
その可憐な花には見覚えがあって、リヴァイの心臓がドクリと音を立てた。