第4章 記憶
面の男は倒れるオレを覗き込む様に顔を近付け、耳元で囁く………オレは一度目を閉じ、無駄だと分かりながら男を睨み付けた………。
『自分を医龍眼で治せたら良かったのにな?……だが、お前の娘はそれが出来る……けど、やられたよ……さっさと娘だけを逃すだろうと思ってたが……無駄な時間稼ぎじゃなく、ミナトを待つための時間稼ぎだったとはな?』
「………ガ……ク……………テ……ェ……」
『……レンジ…… ミズキはオレ達一族に任せろ……必ず手に入れる……悪いな……安らかに死ね……二人、仲良くな……』
「……ッ…………」
男はオレ達が良く知る者だった……そして、オレが不安因子として警戒していた男……医龍眼で治せるのは自分以外の対象のみ………自分を治すことは出来ない……男はオレをミトカの横まで引きずり、横へ下ろすと姿を消し、オレは辛うじて動く手でミトカの頬へ触れた……。
歴代当主が初代様以外、龍宿展篶を使えなかった理由……この術はチャクラ量だけで無く空間を歪め支配する代償に精神力をフル活用する……つまり脳の機能が失われていき、何もしなければ思考が停止し廃人化して終わり……脳の機能を回復出来るのは龍宿展篶内で龍神五体が揃っている時だけ……当主と巫女が同時に龍神眼を使用した時、常に回復、最新の脳へと再生される……勿論、身体の傷全ても完治可能……だから力を恐れた者たちが当主と巫女が一緒にいる事を許さなかった……その力の発動条件は一つ……契りを結び、互いに信用し愛し合う事が条件…………でも、アイツはその情報を何処で知り得た?もう、確認のしようが無い……。
「___ッ!!?や……とーさまッ!!かーさまッ!!!……黒龍ッ!!お願い、戻って!!!」
『………ダメだ……本来なら二人の負った傷は領域内に入れば治せるが二人にはもうそのチャクラは残ってない……レンジとミトカは
ミズキ、お前が無事でいる事を望んでる……だからオレはレンジの命に従う……』
「ッ!黒龍ッ!!お願いっ!まだ間に合うのっ!!」
レンジ、ミトカ……お前たちの娘は不思議だな……喜助とも違う、何か大きな力を感じる……まだ幼子なのにレンジ、お前に劣らない気迫を持っているよ……。